大崎 善生
パイロットフィッシュ

午前二時、アダルト雑誌の編集部に勤める山崎のもとにかかってきた一本の電話。受話器の向こうから聞こえてきたのは、十九年ぶりに聞く由希子の声だった…。記憶の湖の底から浮かび上がる彼女との日々、世話になったバーのマスターやかつての上司だった編集長の沢井、同僚らの印象的な姿、言葉。現在と過去を交錯させながら、出会いと別れのせつなさと、人間が生み出す感情の永遠を、透明感あふれる文体で繊細に綴った、至高のロングセラー青春小説。吉川英治文学新人賞受賞作。(Amazon.co.jp




「これまでに出会ってきた多くの人たちから影響を受け続け、

そしてそんな人たちと過ごした時間の記憶の集合体のようになって

今の僕があるのかもしれない」


「僕は君とは別れてはいない

それが人と人とが出会うということ

一度出会った人間は二度と別れることはできない」



私の大きくて深い『心の湖みたいな場所』にも、

沢山の人との想い出が沈んでいる。


それはふとした拍子に浮かび上がってきて、

ときおり胸を締め付ける。